手術室で働く看護師の約80%が「ストレスを感じている」と回答する調査結果もあるほど、手術室は高ストレス職場です。
だからと言って「つらいのは当たり前」と流さずに、具体的な原因を特定し、対処法を考えることが、キャリアを長続きさせる秘訣です。
ここでは、手術室看護師のストレス原因トップ5と、それぞれの対処法、そして「転職を検討すべきか」という判断基準を解説します。
ストレス原因TOP5
TOP1:オンコールからくる生活リズムの乱れ
ストレスの実態
- 夜中の呼び出しで熟睡できない
- 家族や友人との予定が立てにくい
- 呼び出し明けでも次の日は通常勤務
- 「いつも携帯を手放せない」という縛り感
対処法
- オンコール手当の見直しを:病院の規定を確認し、手当が適切に支払われていない場合は交渉する
- 日課のリセットを作る:オンコール明けの日は、必ず30分の昼寝や軽い運動を入れるなど、自分なりのリセットルーティンを作る
- 家族へ丁寧な説明:「オンコールの日はこういう状態になる」「呼ばれたらすぐに行く」など、事前に理解してもらうことで家族との摩擦を減らす
転職判断基準
「オンコールがなければ手術室は好き」という場合は、日勤のみの診療科(眼科・皮膚科など)への異動や転職を検討すべきです。
「オンコールだけでなく、手術室自体が合わない」と感じるなら、訪問看護や外来、産業保健師など環境を変える選択肢を真剣に検討しましょう。
TOP2:医師との人間関係
ストレスの実態
- 気難しい医師の機嫌に左右される
- 怒号やパワハラ的な叱責を受ける
- 人前で恥ずかしい思いをさせられる
- 「この医師の手術だけは避けたい」と思う
対処法
- 医師の「クセ」を把握する:器械の渡し方の好み、作業のタイミングなど、事前に先輩に聞いてパターンを学ぶ
- 事前確認を徹底する:「今日は腹腔鏡か開腹か」「予定時間は」など、手術前に必ず確認し、準備のズレをなくす
- 境界線を引く:明らかなパワハラの場合は、師長や看護部に相談し、配置調整をしてもらう
転職判断基準
「特定の医師の問題だけ」なら別の病院の手術室への転職も選択肢です。
しかし「複数の医師に対して同じような問題が起きている」「手術室の文化自体が合わない」と感じるなら、手術室から離れる転職(美容クリニック、訪問看護など)を検討すべきでしょう。
どこに行っても嫌な人はいるもの。上手く流せるようになるのも一つの手ではあります。
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TOP3:先輩からのプレッシャーと孤独感
ストレスの実態
- 「これくらい知ってるよね」と暗黙のプレッシャー
- 質問しづらい雰囲気で、分からないまま流してしまう
- 新人のときの指導が厳しすぎてトラウマになっている
- ミスをしたらその後も信頼を取り戻すのが大変
対処法
- 質問をポジティブに変える:「すみません、確認したいのですが」と謙虚に、かつ主体的に質問することで、学ぶ姿勢をアピールする
- 小さな信頼貯金を作る:準備物を忘れない、時間に正確、後始末をきちんとするなど、約束を守ることで信頼を回復する
- 先輩の「厳しさの理由」を理解する:多くの場合、患者の命を守るための期待が厳しさに表れているということを理解する
転職判断基準
「この先輩だけが問題」ならば配置転換を希望するか、その先輩が退職するまで待つのも手です。
しかし「チーム全体の雰囲気が合わない」「他の先輩も同じような対応」ならば、教育体制の整った別の病院の手術室や、全く異なる職場への転職を検討すべきでしょう。
勤務中は厳しいけど、勤務外は気さくに接してくれる先輩も。そんなときは、勤務外に質問してみるのも手でしょう。自分の苦手なところ、不安なところを共有しておくと、責任感があり、厳しい先輩ほどよく気にかけてくれます。
TOP4:責任の重さとミスへの恐怖
ストレスの実態
- 小さなミスが患者の命に直結する恐怖
- 一度ミスをすると、次もまたやるかもしれないと不安になる
- 先輩や医師に強く責められ、自分の能力を否定してしまう
- 毎日「今回も何とか乗り切った」だけで達成感がない
対処法
- ミスを減らすためのチェックシート作成:自分専用の準備確認リストを作り、手術前に必ずチェックする
- 段取りの標準化:同じ手術の場合、準備の順番・配置を毎回同じにして脳の負荷を減らす
- ミスを先制報告する:先に報告することで、後の対応をスムーズにする
転職判断基準
「ミスへの恐怖が日常生活に影響するほど強い」「手術室に入るだけで強い不安を感じる」といった場合は、環境を変えるべきタイミングです。
訪問看護や外来など、より落ち着いて業務ができる職場への転職を検討しましょう。
TOP5:患者と関わる機会の少なさ
ストレスの実態
- 手術室では患者と話す時間がほとんどない
- 「看護師になったのに、患者さんと関われない」
- 手術前の緊張した顔しか見られず、回復過程が見えない
- 「自分のやりがいって何だろう」と疑問に感じる
対処法
- 覚醒室での対話を大切にする:手術後、患者が目覚めるタイミングで「よく頑張りましたね」など一言かけるだけでも大きな違い
- 術前訪問を積極的に行う:手術前日に患者のベッドサイドに行き、手術の流れを説明する中で、関わりを深める
- 看護師としての使命を再確認する:患者の生命を守ることこそが最大の看護であるという視点を持つ
転職判断基準
「患者と関わること」が看護のやりがいの中心なら、手術室から離れる選択肢を真剣に検討すべき。
訪問看護、地域包括ケア、病棟への異動など、手術室以外の選択肢が適しているでしょう。
転職を検討すべき「具体的なサイン」
上記のストレスに加えて、以下のサインが複数当てはまる場合は、転職を真剣に検討すべきタイミングです。
- 出勤前になると強い不安や吐き気がする
- 家族や友人に「最近元気がない」と指摘される
- 手術室に入るだけで心が重くなる
- 過去のミスが頭から離れず、常に自信を失っている
- 周囲の同僚が「転職したい」と口にするようになった
自分の心と体を最優先にできる選択を取ることが
まとめ:ストレスと向き合い、自分に合った選択を
手術室のストレスは、手術室看護師なら誰もが経験するものです。
しかし、「頑張れば何とかなる」という領域を超えて、心身に影響が出始めたら、環境を変える選択も正当なものです。
転職は「逃げ」ではなく、自分の人生と健康を守るための選択肢の一つです。
手術室で培った経験は、どの職場でもあなたの強みになります。
一人で抱え込まず、信頼できる同僚や転職エージェントと相談しながら、「自分にとって無理のない、納得できる一歩」を選んでいきましょう。