「手術室を辞めたい。でも、築いてきたスキルを活かしたい」——こう考えて、日勤のみで手術室スキルを活かしやすい眼科・皮膚科・整形外科クリニックへの転職を検討する手術室看護師は多いです。
でも、実際に転職してから「思ってたのと全然違う……」と後悔する人も少なくありません。なぜか。それは、転職サイトの求人票には載らない「現場のリアル」を知らないまま、イメージだけで決めてしまうからです。
この記事では、手術室経験者の転職実体験と、実際に転職した人たちからよく聞く「本音の感想」をもとに、眼科・皮膚科・整形外科クリニックの現実を、かなり率直に整理します。
手術室看護師が日勤のみ外来に転職する理由【本当のところ】
求人票には「日勤のみ・オンコールなし」と書かれていますが、実際に転職を決める際の心理状態は、もっと複雑です。
1. オンコール地獄からの解放を求めて
手術室のオンコール体制は、職場によって本当にまちまちです。
「月2回程度」という求人票の記載とは裏腹に、実際には「月5~6回は呼ばれる」という職場も存在します。
さらに、呼び出し明けでも翌日は通常勤務という職場がほとんど。
子どもがいる看護師は特に、「夜中に呼ばれるたびに、実家や夫に頼らなければならない」というストレスを日々抱えています。
このストレスから逃げるために、「給料は少し下がってもいい、とにかく日勤のみにしたい」と決断する人が多いのが実態です。
2. 人間関係のリセット願望
手術室の人間関係ストレスは、他の部署の比ではありません。
「あの医師の手術の日だけは避けたい」「先輩との関係が壊れて、もう手術室にいられない」といった事情から、同じ病院内での異動ではなく、思い切って外の施設への転職を選ぶ人も多いです。
日勤のみのクリニック環境なら、医師と看護師・事務スタッフが少人数で、比較的シンプルな人間関係が期待できる——そんな幻想を求めている側面もあります。
3. 体力の限界
10年目を超える手術室看護師からよく聞く言葉が、「足腰が限界」「長時間の立ち仕事がもう無理」というものです。
手術室は、朝7時の来室から夕方まで「ほぼずっと立ちっぱなし」という働き方が日常です。
年齢を重ねると、その疲労は翌日に持ち越し、プライベートも「何もする気力がない」という状態になりやすい。
「外来なら患者の様子を見ながら座る時間もあるだろう」「日中に外の光を浴びながら働きたい」という、純粋な体力面での考慮から、転職を決める人も少なくありません。
眼科クリニック:「手術技術は活きるが、予想外の業務が多い」
実際の仕事内容【想像とのギャップ】
転職前のイメージ
- 視力検査機械の操作
- 白内障など日帰り手術の介助
実際の日常業務
- 患者の電子カルテ入力補助
- 受付業務(会計説明、予約受付)
- クレーム対応(待ち時間が長い患者からの苦情など)
- 眼鏡処方の説明
眼科クリニックは、想像以上に「接客業務」のウェイトが高いのです。
手術室では「医療の専門性」一本で評価されていたのに、クリニックでは「患者満足度」も同じくらい重視されます。
給料の実態
- 手術室での月給35万円(例)→ クリニックでは月31~32万円(例)
- 「手当」という概念がほぼないため、基本給だけで判断することになる
- ボーナスも「1ヶ月分未満」という小規模クリニックも少なくない
転職前に「年収ベースで何万円下がるか」をしっかり計算していない人が、後で後悔するケースが多いです。
向いている人・向かない人
向いている人
- 患者さんに丁寧に説明することが得意
- 同じルーティン業務を確実に回すのが得意
- 「急性期の緊張感から解放されたい」という気持ちが強い
向かない人
- やりがいを「患者の劇的な変化」に感じるタイプ
- 細かい説明や接客が苦手
- 「器械操作だけ」で仕事が完結すると思っていた人
転職者からの本音
40代看護師
「眼科に転職して半年。手術日以外は『看護師というより事務職』という感じです。でも、オンコールがなくて、子どもの帰宅時間に家にいられるのは本当に幸せです」
30代看護師
「手術の技術は活かせるんですが、患者さんからのクレーム対応が本当に大変。手術室では『医師に怒られる』だけでしたが、ここでは患者さんからも従事者からも。もう辞めたいです」
皮膚科クリニック:「意外と体力勝負。美容系は給料が変わる」
仕事内容の現実
一般皮膚科
- 診察補助(患部の露出補助など)
- 採血・軟膏塗布などの簡易処置
- 患者指導(スキンケア方法、生活指導)
- ニキビ・アトピー患者との定期対応
美容皮膚科(兼務クリニックの場合)
- レーザー機器の操作補助
- 美容施術(プラセンタ注射、ケミカルピーリングなど)の介助
- 術前術後のカウンセリング補助
- 営業的なトーク(「○○パックも一緒にいかがですか?」的な提案)
重要なポイント: 美容寄りのクリニックほど、看護師も「営業的要素」を求められることがあります。
手術室では完全に医療専門の立場でいられたのに、クリニックでは「顧客満足度」と「医療の質」の両立を求められるのです。
給料・インセンティブの差
一般皮膚科
- 月給30~33万円程度
- ボーナスは年1~2回、合計1~2ヶ月分
美容皮膚科(美容施術併設)
- 基本給は同程度だが、施術売上に応じたインセンティブが上乗せされることがある
- 「頑張り次第で年収が変わる」という構造
実際に、美容系で成績を上げている看護師は、手術室から転職して「むしろ年収が上がった」というケースもあります。
ただし、「営業的プレッシャー」が好きでない人には、精神的負担が増す可能性もあります。
転職者からの本音
35歳看護師
「皮膚科は『予想外に忙しい』が正直なところです。花粉症の季節は、朝から夜までずっと患者さんが来ます。『日勤だから楽だろう』というイメージは大間違い」
38歳看護師
「美容寄りのクリニックに転職しました。最初は違和感があったけど、年収が手術室時代と変わらない+完全日勤という最高の環境です。ただ、売上目標がある雰囲気は苦手な人は本当に苦手だと思う」
整形外科クリニック:「意外と処置が多くて、むしろ忙しい」
仕事内容【想像と現実の大きなズレ】
転職前のイメージ
- ギプス巻きの補助
- 患者の説明補助
実際の業務
- 骨折・捻挫患者の搬送・移乗補助(腰痛になる人も多い)
- ギプス巻き・テーピング・固定具の準備と実施補助
- リハビリ部門との連携
- 日帰り関節鏡手術の介助
- 注射(ステロイド関節注射など)の準備・介助
整形外科は、実は「処置量が多く、身体的負担が意外と高い」という特徴があります。
患者の移動や固定具の準備など、細かい力仕事が多く、「日勤だから楽」というイメージは持たない方が無難です。
給料・待遇
- 月給32~35万円程度(手術室より少し低め)
- 土曜勤務がある代わり、平日に休みがあるパターンが多い
- 「夕方混雑」により、定時帰宅ができないことも頻繁
整形外科特有の課題
リハビリ部門との連携が多いため、看護師が「医師とリハビリの仲介役」になることが多いのです。
つまり、
- 医師と意見が異なることもある
- 患者の要望とリハビリ方針が合致しないこともある
といった「板挟み」のストレスが出やすい環境です。
向いている人
- 身体を動かすことが得意
- リハビリを通じた「回復過程の見守り」にやりがいを感じる人
- 手術室での整形経験が豊富で、その延長線上で働きたい人
転職者からの本音
42歳看護師
「整形外科は患者さんが比較的元気なので、話しかけやすくていいです。でも、処置がめちゃくちゃ多くて、『日勤だから体が楽になるかな』という期待は完全に外れました」
36歳看護師
「手術室から転職して3年。完全に日勤になったことで、子どもの習い事の送迎ができるようになったのが本当に幸せです。給料は下がったけど、人生の優先順位から言えば大正解」
転職前に「絶対に確認すべき」3つのポイント
多くの転職ギャップが生まれるのは、表面的な情報だけで決めてしまうからです。
1. 実際の診療時間と残業時間
求人票:「診療時間 9:00~17:00、日勤のみ」
実態:「診療受付は17:00までだが、実際の患者対応は18:00以降まで」
これが「1日1時間の残業」では済まず、「毎日1~1.5時間」「繁忙期は2時間」となることもあります。
面接時に、実際に働いている看護師から「平均残業時間」「ピークシーズンの忙しさ」を直接聞くことが重要です。
近くなら、診療終了予定時間に終わっているかを見に行くのもありだと思います。
2. クリニックの規模と看護師人数
- 医師1人:看護師1人+事務1人
- 医師1人:看護師2人+事務2人
この差は、一人にかかる業務量と人間関係に大きく影響します。
少人数クリニックは「アットホーム」に見える一方で、「休みが取れない」「誰かが休むと回らない」といった問題が生じやすいのです。
3. 「手術・処置の比重」を正確に把握する
- 月間手術件数
- 手術以外の処置内容
- 看護師は器械出しメインか、それとも患者対応もメインか
眼科・皮膚科・整形外科でも、クリニックの方針によって「看護師の仕事内容」は大きく変わるということです。
転職後にうまくいく人の特徴
実際に転職して満足している人たちを見ると、共通のポイントがあります。
- 「給料や待遇」より「生活の質」を優先できた人
収入よりも生活リズムを優先すると決めることで、収入を気にすることなく仕事を楽しめます。 - 「接客要素」を理解して、むしろその成長を楽しめる人
手術室との違いを「負」ではなく「新しい学び」として捉えることも重要。
自分の性格を考え接客的な要素を受け入れられるかをしっかり考えることも。 - 事前に職場の詳細情報を集めた人
職場見学をしたり、実際に働いている看護師と話をしたりリアルな情報を集めるのは重要!
募集要項と実際の現場に差異がないか、どの程度違うか、情報収集は必須です。 - 「完璧な職場」を求めていない人
「オンコールがない」という一つの願いが叶えば、他の小さな不満は許容できる人。
全て理想的な職場は案外少ないです。「これだけなければOK」というものを決めておくと転職後満足しやすいです。
最後に:決める前に「これだけは確認して」
手術室から日勤のみクリニックへの転職は、一定の「覚悟」が必要です。
- 年収が下がることを覚悟し、実際に確認しているか
- 「接客業務」の面が増えることを理解しているか
- その職場の「実際の忙しさ」を知っているか
これらを踏まえたうえで、「それでもこの職場に行きたい」と決断できれば、転職後も納得度の高い働き方ができます。
手術室で培った「急性期対応力」「器械スキル」「医療知識」は、眼科・皮膚科・整形外科でも必ず活きます。
ただし、「環境を変えれば全てが解決する」わけではなく、「自分は何を優先したいのか」という価値観の整理が最も大切だということを忘れずに。
焦らず、情報を集め、納得したうえで、次の一歩を踏み出してください。