手術室看護師がやめたいと思う10の理由|経験者が語る本音

手術室で働いていると、楽しくて頑張ろうと思える時も多いですが、「やりがいはあるけれど、正直つらい」「このまま続けていける自信がない」と感じる瞬間が何度も訪れます。

ここでは、実際に手術室を経験した看護師たちの声として挙がりやすい「やめたい理由」を10個に整理し、本音ベースで解説します。

「自分だけが弱いわけじゃなかった」と感じられるきっかけになれば幸いです。

辞めたいと思う理由10選

1.常に張りつめた緊張感とプレッシャー

手術室は、患者の命に直結する現場です。
器械の出し間違い、指示の聞き間違い、タイミングのズレ——どれも重大な事故につながる可能性があります。

そのため、

  • 手術中は一瞬も気が抜けない
  • 終わったあと、どっと疲れて何もする気が起きない
  • 休憩中も帰宅後も次のオペの段取りが頭から離れない

といった状態が日常化しやすく、「常に全身全霊」で働き続けることに限界を感じてしまう人が少なくありません。

経ちっぱなしで身体的な負担も大きいなか、家でも翌日のことが頭から離れないストレスは相当なものです。

2.医師や先輩との人間関係のストレス

手術室は閉鎖的な空間で、少人数のチームで動くことが多い分、人間関係の影響が大きく出やすい職場です。

  • 気難しい外科医の機嫌に左右される
  • 先輩の指導が「指導」を超えて怒鳴りや詰めに近い
  • ミスをしたときに責められ方が強く、萎縮してしまう

こうした環境が続くと、「手術そのものは嫌いじゃないけれど、この人たちと働くのはつらい」という気持ちから、転職を考えるきっかけになります。

緊張感やプレッシャーの中、癖のつよい人たちに気を使って働くのはストレス以外の何もにでもありません。

3.オンコールによる生活リズムの乱れ

夜勤はなくても、オンコールがある手術室は多くあります。
表向きは「日勤のみ」でも、実際には夜間・休日も携帯電話を手放せない状態になりがちです。

  • 寝ていても「呼ばれるかも」と熟睡できない
  • 呼び出し明けでも、翌日ふつうに勤務がある

こうした生活が続くと、身体的な疲労だけでなく、「縛られているような感覚」による精神的な疲れも積み重なっていきます。

当番制で呼ばれた場合のみ手当てがつくという場合もあり、夜勤がある病院ほどお給料が良いわけではないが、予定は制約されるという負担

4.責任の重さのわりに給与が見合わないと感じる

手術室看護師は高い専門性を求められ、責任も非常に重い仕事です。
しかし、実際の給与は病棟看護師と大きく変わらない、あるいは夜勤手当がない分だけ年収が低くなるケースも少なくありません。

  • 「これだけのプレッシャーを背負っているのに、この給料?」
  • 「同期は病棟の夜勤で年収を上げているのに、自分は横ばい」

と感じるようになると、やりがいだけではモチベーションを維持しにくくなり、「これなら別の働き方を考えた方がいいかも」と感じてしまいます。

5.患者と直接関わる機会の少なさ

手術室は、患者と接する時間が極端に短い部署です。
名前を確認し、簡単に声をかけたと思ったら、すぐに麻酔導入——気づけばもう覚醒室へ、という流れが多くなります。

  • 「看護師になったのに、患者さんと会話らしい会話ができない」
  • 「回復していく姿を見ることがほとんどない」

といったギャップから、「自分が思い描いていた“看護”とは違う」と感じ、病棟や訪問看護など、もっと長く関われる現場に興味を持つ人も多いです。

6.ミスへの恐怖と自己否定感

手術室は、ほんの小さなミスでも大問題になり得る環境です。
そのため、以下のような心理状態に陥りやすくなります。

  • 一度ミスをした経験がトラウマになり、「またやるかもしれない」と怖くなる
  • 先輩や医師に強く責められ、「自分は向いていない」と思い込んでしまう
  • 毎日「今日も何とか乗り切っただけ」という感覚で、達成感を得にくい

この「常に自己否定と不安を抱えながら働く」状態が長く続くと、心がすり減り、「やめたい」という感情が表に出てきます。

実際にミスをしてから働けなくなる人や、そのまま退社してしまう人も少なくありません。

7.長期的なキャリアのイメージが湧きにくい

手術室の仕事は専門性が高い一方で、「他部署や他職種への展開」がイメージしづらいという側面もあります。

  • 病棟経験がないまま年数だけ重ねてしまい、異動や転職に不安を感じる
  • 職場のロールモデルが「認定看護師になる」か「師長になる」くらいしか見えない
  • 10年後、20年後に自分がどうなっていたいのか想像できない

そうなると、「このままここにいていいのか」という漠然とした不安が、じわじわと「やめたい」という気持ちに変わっていきます。

病棟看護とは全く違ったスキルが求められる環境で、一般的な「看護師」としてのスキルが上がらないことは将来の不安に直結することもあります。
関連記事

手術室で働きながら、「このまま今の働き方を続けていて大丈夫だろうか」と不安になる瞬間はありませんか。 オンコールや緊張感の高い現場、人間関係、将来のキャリア、一般的な看護師としてのスキルがつかないことへのモヤモヤなど、手術室看護師ならでは[…]

8.ライフイベントとの両立の難しさ

結婚・出産・育児といったライフイベントは、手術室勤務との両立をいっそう難しく感じさせます。

  • 子どもが熱を出しても、オンコールで呼ばれれば対応しなければならない
  • 実家やパートナーのサポートがないと、夜間呼び出しに対応できない
  • 「母親としての役割」と「看護師としての責任」の間で罪悪感を抱きやすい

こうした状況を経験して、「今の働き方のままでは家族を大事にできない」と感じ、転職や部署異動を真剣に考える人は多いです。

いくら子どもが大きくなっていても、体調が悪いのに夜間も家に居れないというのは母親として罪悪感が大きいものです。

9.教育体制やフォローの不足

本来であれば、手術室のような専門部署こそ、丁寧な教育体制が必要です。
しかし現実には、余裕がないために

  • 「見て覚えて」のOJTに頼りがち
  • 新人・中途へのフォローが十分でない
  • 質問しづらい空気があり、分からなくても流してしまう

といった環境も少なくありません。

「きちんと教えてもらえないのに、責任だけは重い」という状態が続くと、安心して働くことが難しくなり、「もっと教育が整った職場に行きたい」という思いが強くなります。

10.「自分には合っていない」と感じる瞬間が増える

最後に、はっきりとした理由が一つあるわけではなく、
日々の小さな違和感が積み重なって「やっぱり自分には向いていないのかもしれない」と感じるパターンもあります。

  • 雰囲気・スピード感・求められる性格が、どうしても自分と合わない
  • 周囲の看護師たちが「楽しそう」「やりがいありそう」に見えず、将来像に希望が持てない
  • 出勤前になると強い憂うつ感や身体症状が出る

ここまで来ると、「頑張れば何とかなる」の領域を超えていることも多く、心身を守るためにも環境を変える選択が必要になる場合があります。

楽しいと思えることが少なくなり、やめたい気持ちが高まると職場に行くのもつらくなります。

おわりに:やめたいと思ったときに大事にしてほしいこと

ここまで挙げた10の理由は、どれも手術室看護師にとって「よくある本音」です。
大事なのは、「こんなふうに感じる自分がおかしい」のではなく、「そう感じるのが自然な環境にいる」という視点を持つことです。

  • 今つらいと感じているのは、能力が低いからではなく、環境や働き方が合っていないだけかもしれない
  • 手術室で積み上げてきた経験は、他の診療科や訪問看護、美容、企業、別の手術室など、さまざまな場所で活かせる
  • 「やめたい」と感じたタイミングは、自分の人生とキャリアを見直すサイン

一人で抱え込まず、信頼できる同僚や上司、家族や友人などの外の人の意見も聞きながら、
「この先の数年をどう過ごしたいか」をゆっくり言葉にしていくことが大切です。

手術室を続けるにしても、離れるにしても、自分の心と身体を守る選択をしていいのです。

関連記事

手術室で働く看護師は、病棟看護師とは異なったストレスを感じています。 「このまま手術室にいていいのか」「いつまで夜中の呼び出しに対応し続けるんだろう」「医師や先輩の厳しい言葉に耐えて、あと何年働けばいいの?」——こんなことを考えたこと[…]